自動走行システムの最新ガイダンス『安全性へのビジョン』の概要(その2)
~自動走行に係る、州政府のための技術支援及び立法機関のためのベストプラクティス~
2017年9月21日
NEDOワシントン事務所
Section 2:自動走行に係る、州政府のための技術支援、及び、立法機関のためのベストプラクティス
同ベストプラクティスは、自動走行システム(Automated Driving Systems:ADS)規制における連邦政府及び州政府の役割を明確にし、州政府がADSに係る法律・規制を策定する際に利用可能な枠組みを提示することを目的とする。
ADSに関する州政府の責任範囲、及び、連邦政府レベルでの国家道路交通安全局(NHTSA)の責任範囲は、在来型車と同様で、以下のように整理される:
NHTSAの責任 | 州政府の責任 |
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【立法機関のためのベストプラクティス】
NHTSAは、州政府がADS規制を作成する際に、安全性に係る以下のベストプラクティスを検討するよう推奨する。
- 「テクノロジー・ニュートラル」な環境の提供
州政府は、ADSの実験または展開を自動車メーカーだけに制限して、競争及びイノベーションに不要な負担をかけるべきではなく、実験または展開に関する連邦法及び州法の必須条件を満たすすべての事業者が州内で活動することを可能にすべきである。
- 運転許可交付及び自動車登録に係る手続きの確立
州の道路・高速道路を走る全車両をADS法で「自動車」と定め、ADSを搭載する全車両を登録し、ADSの事業者及びテストドライバーへ免許を交付し、債務支払能力証明(保証証券 (surety bond) または自己保険)の要件を設定するよう奨励する。
- 公安担当官のための報告・通信手段の確立
州政府は、ADSを巻き込んだ衝突事故及びその他の路上事故を、事業者が警察及びファースト・レスポンダーに報告するための手段を策定すべきである。
- ADS運用の障壁となる道路交通法及び規制の見直し
州政府は、自州の交通条例・道路交通法等を見直し、ADSの公道実験に関して不要な規制面での障壁がないかどうかを確認すべきである。
【州幹線道路安全当局のためのベストプラクティス】
NHTSAは、ADSの活動を支援するにあたり、州政府による新プロセスまたは新要件の策定が絶対に必要であるとは考えていないものの、ADSを既存プロセスまたは既存要件に統合することを検討している州政府、及び、新プロセスまたは新要件を検討している州政府のために、ガイダンスとして以下のベストプラクティスを提示している。
- 行政管理面
NHTSAは、ADSの活動支援で、州政府による特別機関の新設が必要であるとは考えていないが、州政府がこうした機関が有用であると判断する場合に検討すべき事項は以下の通り。
● ADS実験に関する審議の責任者となるリード組織の確定
● リード機関、州知事室、自動車局(Motor Vehicle Administration)、州政府運輸省、法執行機関、州政府道路安全局、州政府保険監督局、高齢者・身体障害者を担当する州政府官庁、有料道路庁、公共交通機関管理局、トラック輸送バス管理局の代表者等からなる、ADS技術委員会の新設
● 州内におけるADS実験事業者の申請に係る内部プロセスの策定
● ADS車許可書を交付する内部プロセスの確立
- ADSの公道実証実験を行う事業者の申請プロセス
テスト車両を対象とする申請プロセスを有する州政府が、ADSの公道実験申請に関して検討すべき事項は以下の通り。
● 事業者がADS実験を計画している州に設置されたリード機関に、申請書を提出するよう事業者に要請。更に、ADSの実験に複数の事業者が従事している場合、申請書の提出方法を検討
● 正確な記録管理のため、事業者に下記情報の提出を要請:
(i)名称、実住所と郵送先住所、州内の実住所と郵送先住所、プログラム管理者の名前及び連絡先
(ii) 公道で使用予定のADSに関して、各車両のVIN、車種、製造年、メーカー等
(iii) テストドライバーの身分証明書及び運転免許証
● ADSの安全及び順守に係る事業者計画の提出
● ADSが起こした、対物対人の損傷害に対する賠償判決を満足させる債務支払能力の証拠(保険、保険証書、自己保険の証明等)提出
● 従業員、コントラクター、及び、事業者がADSテストドライバーとして指定したその他ユーザーを対象に実施した訓練概要の提出
- ADSの公道実験を行う事業者の認可プロセス
自動車実証実験に許可を付与する州が、ADSの公道実験許可に関して検討すべき事項は以下の通り。
● 事業者からの実験申請に応じる前に、州政府のリード機関は法執行機関へ連絡
● 保険または運転者に係る州政府要件を順守できない事業者の認可一時停止
- ADSのテストドライバー及び操作に係る考慮
特定の状況下で事業者専属ドライバーによるADS実証実験に対してアクセスを提供する州が検討すべき事項は以下の通り。
● ADSテストドライバーの訓練が懸念される場合、州政府はテストドライバー向けの訓練概要の提出を要請
● SAE自動化レベル3以下のADS搭載車の場合、運転免許を保有するドライバーが、車両の操舵、作動状態の監視、緊急要請時の車の操作等、の責任を担う
● SAE自動化レベル4及び5のADS搭載車の場合、特定の環境または状況下では、出発点から目的地までの全ての運転操作を車のADSが実行
- 登録及び所有権証明書に係る考慮
民生用に配備されるADSのID(識別情報)及び記録に関して、州政府が検討すべき事項は以下の通り。
● 車両の登録及び所有権証明書にADSのIDを記載
● 車両販売後に大きなアップグレードがあった場合、ADSのアップグレード通知を事業者に義務付け
- 公安担当官との協力
公安担当官との協力に関して、州政府が検討すべき事項は以下の通り。
● ADSの操作、及び、起こり得るインターアクションへの理解を深めるため、公安担当官を対象とする訓練の実施
● 州政府間の協調を通じて、ADS作動時における運転者の挙動に係る政策を策定
- 法的責任及び保険
交通事故の際の法的責任、及び、運転者・事業者・ADSの保険を考慮する州が検討すべき事項は以下の通り。
● ADS所有者、運転者、乗客、メーカー、及び衝突事故発生時のその他当事者の間における法的責任の配分方法
● 保険に関して、誰(所有者、運転者、乗客、メーカー、その他の当事者、等)が自動車保険に加入するべきかを確定
● 不法行為(tort)責任の割り当てに係る規則及び法律の検討