2019年01月07日 国家インフラ諮問委、『大停電を切り抜けるために』という報告書を発表

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国家インフラ諮問委員会、『大停電を切り抜けるために』と題する報告書を発表

 

2019年1月7日
NEDOワシントン事務所

大統領の国家インフラストラクチャー諮問委員会 (President’s National Infrastructure Advisory Council:NIAC)[1] が12月12日、『大停電を切り抜けるために:国家ケイパビリティ強化方法 (Surviving a Catastrophic Power Outage: How to Strengthen the Capabilities of the Nation) 』と題する報告書を発表した。

同報告書は、米国が大規模災害、及びその結果生じる停電への対応能力を着実に改善してきたことを評価する一方、自然災害、サイバー・フィジカル攻撃、エレクトロマグネティック現象等の脅威の増大によって、「大停電 (catastrophic power outage)」からの全米電力系統の防護、及び、迅速な復旧といった新たな課題が浮かび上がっていることを指摘。現行の国家計画、緊急時対応資源、及び相互支援計画は、広範な地域にわたって長期間、更には他の重要インフラ部門に連鎖影響をもたらす大停電に対処するには不十分であり、新たな対応策が必要であると主張している。

NIAC報告書では、こうした新たな課題に対応すべく、(1)クロスセクター・省庁間戦略の構築に向けた、大停電への準備・対応・復旧に関する国家的アプローチの策定、(2)クロスセクターの相互依存性及び連鎖障害による被害を軽減するため、連鎖障害が重要部門(特に天然ガス・通信)に及ぼす影響の確認、という2つの包括的戦略を提言している。NIACの7提言は次ページ以降の通り。

<注目点>

  • NIACは、創設(2001年)時の目的は重要インフラの情報システム防護であり、委員会メンバーは金融部門・運輸・エネルギー・通信・緊急時サービス等の情報システム防護を担当するCEOで構成されていた。その後、2005年9月発布の大統領令第13385号により、目的が重要インフラ部門全般の防護に拡充され、委員会メンバーの構成は情報システム担当のみならず、より広範な関連部門の有識者へと変更。
  • 今般報告書は、自然災害、サイバー・フィジカル攻撃、EMP攻撃リスクに対し、DHSやDOE等を主担当とした取組を提言。先般来、DHSがNational Risk Management Centerを設立するなど(昨年7月)、電力、通信、金融分野を中心に、CIの強靭性強化の取組が加速(①CIに係るリスク特定、分析及び低減、②リスクマネージメント開発における連携、③業種横断的なリスクマネージメント活動の促進)。本報告書では、こうした内容を、政府大/クロスセクターで進める必要性を明確化。今後、各提言の具体化プロセスに注目。


大停電の定義

  • 事前通告のない又は十分でない事象であって、(i) 自然災害にタイミングを合わせた複雑なサイバー・フィジカル攻撃、(ii) 短時間に続発して、物的損害をもたらす事象;(iii) 深刻な物的損害を招き得る、自然または人為的なエレクトロマグネティック現象、等
  • 変圧器や送電線等の機器の破壊、又は復旧作業員不足や交換部品の製造・配達不能を引き起こす事象が原因となる長期停電 (最短2ヶ月間。但し、6ヶ月間以上の可能性大)
  • 米国の広範囲 (複数州または複数地域) にわたって5,000万~7,500万人に影響をもたらし、州・地方政府の経済力を脅かす事象
  • 連鎖的に、上下水道・通信・輸送・ヘルスケア・金融等の重要部門におけるオペレーションの低下を引き起こす事象
  • 現行の相互援助計画及び緊急時対応計画のケイパビリティを超越する又は枯渇させる事象


提言

A. 大停電に対する国家的アプローチの策定

 提言1 大停電及びグリッドセキュリティ緊急時には、かつてないレベルの連邦リーダーシップが必要。一方で、指揮体系、決定者、及び資源調整方法が不明確であるため、連邦政府権限を調査・明確化し、閣僚レベルのリーダーシップ及び意思決定プロセスを明らかにすべき

  • リード機関:国土安全保障省 (DHS)
  • サポート機関:エネルギー省 (DOE)及び国防省
  • 緊急事態時の連邦政府権限を調査し、かかる権限の発動者及び発動方法を確認
  • 大停電時に指導的役割を担う閣僚レベル高官を特定。かかる高官が民間部門、州・地方政府と協力して、大停電がクロスセクターにもたらす連鎖影響への対応策を調整・実行する方法を確立
  • 大停電を、DOE[2]、DHS[3]、及び国防省[4]の最優先ミッションに認定
  • 重要インフラ部門の、国家インフラストラクチャー調整センター (NICC) 及び国家サイバーセキュリティ・通信統合センター (NCCIC) への参画を促進


 提言2 大停電の影響軽減及び被害復旧について、インフラ部門・都市・コミュニティ・農村地域がとるべき施策を明示する、連邦政府の設計基準及びクライテリアを策定すべき

  • リード:DHS
  • サポート:DOE、国家リスク管理センター、国立標準規格技術研究所 (NIST) のコミュニティ・レジリエンス計画、及び、経済諮問委員会
  • 重要インフラ強化のための設計基準及びクライテリア(非常用電源、ブラックスタート、燃料供給、非常用通信、食料・飲料水等) の策定
  • NISTのコミュニティ・レジリエンス計画の対象領域を拡大し、大停電に係る連邦設計基準及びクライテリアを追加
  • DHS国家リスク管理センター (NRMC) の国家重要機能分析及び分析能力を、州・地方政府及び重要インフラの所有者・運営者等と共有
  • 大停電が重要インフラにもたらす経済的及び社会経済学的影響、及び、大停電時における国家経済の耐久力・復旧力の評価


 提言3 コミュニティ・エンクレイヴ (community enclave)[5] の構築を計画する州政府・地方政府・都市・地域向けに指針を策定し、資源を提供すべき

  • リード:DHS
  • サポート:連邦緊急事態管理局 (FEMA)、DHSの国家保護・プログラム局(NPPD)、DOE、NISTのコミュニティ・レジリエンス計画
  • コミュニティに必須なライフライン機能 (通信、電気、燃料、金融サービス、食料、上下水道、医療施設) 及び、これらの必要期間 (例:30~45日間) の確認
  • コミュニティ・エンクレイヴ設計手法[6]の実証を支援
  • 州・地方政府がコミュニティ・エンクレイヴを構築するにあたり、既存インフラ (配送電回廊・上下水道・天然ガスパイプライン・ガソリンスタンド・食料品店・学校・病院等) を確認する自主的査定の開発及び促進
  • ビジネス及び個人を対象とする訓練計画の策定・実施


 提言4 同報告書に記載された提言の実施を促進するため、企業、NGO、及び州・地方政府向けのインセンティブ・ポートフォリオ (財政支援の提供、又は、金融・規制面障壁の削除) を策定し、支援すべき

  • リード:財務長官
  • サポート:特定の関連省庁長官、及び、FERC
  • 対応策又は必要資金の正当化に必要なクライテリアを、全米設計基準で提供
  • 連邦政府の電力部門支援
    • FERCは、基幹電力系統強化への投資を促す原価回収インセンティブ、及び、資本利益率 (return on equity) インセンティブを実施
    • DOE長官は、小売・配電レベルでの原価回収インセンティブ提供、又はレジリエンス投資の原価回収の査定を行う州政府公益事業委員会に対するインセンティブ及び技術支援の提供で、米議会と協力
  •  当該省庁が検討すべきインセンティブ
    • 大停電中の規制遵守免除
    • 州政府グラント他の投資に対するマッチングファンド
    • 同報告書に盛り込まれた投資又は対応策を促進する、合理的な許認可手続
    • 連邦政府のレジリエンス設計基準達成を目的とする投資の税額控除


B. クロスセクターの相互依存性及び連鎖障害の軽減

 提言5 停電が長引き、非常用資源及び相互援助協力が枯渇するに伴って発生する二次・三次のカスケード影響を確認するために地域別の大停電訓練を行い、電力系統の回復遅延を引き起こし得るクロスセクター・サプライチェーンのリスク及びサイバー・リスクを調査すべき

  • リード:DOE
  • サポート:北米電力信頼度協議会 (NERC)、DHS、及びFERC
  • 連邦政府は訓練結果を活用し、地方送電機関 (RTO)/独立系統運用事業者 (ISO) 及び信頼度調整担当者が地域の発電業者・送電網所有者・燃料提供業者と協力してブラックスタート訓練及び対応・復旧計画を実施する方法に関するガイダンスを策定
  • インフラ障害が原因の連鎖障害に関する理解を深め、ベストプラクティスを確認・推進するため、クロスセクターの過去10年間の失敗を分析
  • 連邦政府の召集力を活用して、クロスセクターの共同エンゲージメント (collaborative engagement) を指導・推進


 提言6 天然ガスパイプラインが、大停電時にもサービスの継続、及び、ブラックスタート発電の高可用性の維持に必要な適切な基準・設計・プラクティスを設けていることを保証すべき

  • リード:DOE
  • サポート:運輸省、NERC、及びFERC
  • 天然ガスパイプラインの安定した運営及びレジリエンスを保証するプログラム (自主的な業界指導施策、義務基準、又は、これらの組み合せ) を設定
  • 発電及び送電網の所有者及び運用者が天然ガス供給業者と共同でブラックスタート訓練を実施することを奨励する指針を確立


 提言7 全セクターでの相互利用が可能で、どのような危険からも十分防護され、順応性・適応性に優れた自家動力の緊急時通信システムを開発・促進すべき

  • リード機関:DHS
  • サポート:国防省、DOE、及び連邦通信委員会 (FCC)
  • 停電の原因が何であれ、民間部門、連邦政府、州・地方政府、及びその他機関が確実に連絡できるよう、通信方法のポートフォリオを整備

 

 

[1] 2001年10月にG.W.ブッシュ元大統領の大統領令により創設された委員会で、国家の重要インフラストラクチャー部門の機能体系、物的資産、及びサイバーネットワークのセキュリティ及びレジリエンスを調査し、同部門のリスク軽減戦略を大統領に助言することを目的とする。NIACの設置期間は、オバマ前大統領及びトランプ大統領により延長され、現時点では2019年9月30日が最終日。NIACの委員は、大統領がエネルギー・運輸・水・通信・ヘルスケア・食料・農業・政府施設・緊急時サービス・高等教育・環境気候レジリエンスの有識者、及び、州・地方政府の関係高官等から指名 (現在の委員数は20名) 。委員会会合は年4回開催されている。

[2] 具体的には、電力局 (Office of Electricity) 及び サイバーセキュリティ・エネルギーセキュリティ・緊急時対応局 (Office of Cybersecurity, Energy Security, and Emergency Response)

[3] 具体的には、連邦緊急事態管理局 (FEMA) 及び サイバーセキュリティ・インフラストラクチャー安全保障局 (FEMA)

[4] 具体的には、アメリカ北方郡 (NORTHCOM)、アメリカインド太平洋軍 (INDOPACOM)、及び国防脅威削減局 (DTRA)

[5] コミュニティ周辺住民の生活及び健康・安全の維持、及び、住民の屋内避難 (shelter-in-place) を考慮して、コミュニティ内に数ヵ所、必要不可欠なサービスと資源を共同設置した飛び地 (エンクレイヴ) を設けること

[6] 従来型のインフラ強化から、分散型エネルギー資源・エネルギー貯蔵・革新的技術を結合したマイクログリッドに至るまでの、多様な設計手法

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