「2009年アメリカの経済回復・再投資法案」の下院案と上院案の比較
NEDOワシントン事務所
2009年02月03日
下院法案注1 | 上院法案注2 | |
エネルギー省 | ||
エネルギー計画 | ||
EERE | エネルギー効率化・再生可能エネルギー(EERE)に185億ドル。
a) 先進バッテリーを含む、エネルギー効率化・再生可能エネルギーの研究開発実証・普及活動に20億ドル。この内、8億ドルがバイオマス技術、4億ドルが地熱技術。 b)産業施設や製造工場で廃熱の回収・再利用を奨励する廃熱エネルギー回収インセンティブ計画の遂行のために5億ドル。 c) 学校や病院における省エネプロジェクトの実施を支援する州政府に対する、エネルギーの持続可能性・効率化グラントとして10億ドル。 d)低所得家庭の耐候化支援として62億ドル。 e) 州政府や地方政府によるエネルギー効率化・省エネプログラムの実施を支援する、エネルギー効率化・省エネブロックグラント(Energy Efficiency and Conservation Block Grant)として35億ドル。 f) 州政府のエネルギー効率化・再生可能エネルギーにグラントを提供する州エネルギープログラム(SEP)に34億ドル。 g)プラグイン電気自動車技術の使用を奨励するプログラム、及び、運輸部門の当面の(near-term)電化プロジェクト実施を支援するため、州政府や地方政府、都市交通局や大気汚染規制区域、民間企業や非営利団体等へのグラントとして2億ドル。 h) Energy Star製品の購入推進を目的とする消費者向けリベートに3億ドル。 i) 州政府や地方政府による代替燃料車や燃料電池自動車の購入支援として4億ドル。 j) 先進バッテリーの製造に対するグラントとして10億ドル。 |
EERE活動に143.98億ドル。
a) 米国のエネルギーポートフォリオを多様化し、確実な国産エネルギー供給に貢献する技術の開発を推進する、エネルギー効率化・再生可能エネルギーの研究開発実証・普及活動に26.48億ドル。 b)該当条項なし。 c) 学校や病院における省エネプロジェクトの実施を支援する州政府に対する、エネルギーの持続可能性・効率化グラントとして16億ドル。 d)低所得家庭の耐候化支援として29億ドル。 e) 州政府や地方政府によるエネルギー効率化・省エネプログラムの実施を支援する、エネルギー効率化・省エネブロックグラントとして42億ドル。内、21億ドルは現行方式で授与し、残りの21億ドルは競争に基づいて州政府に授与。 f) 州政府のエネルギー効率化・再生可能エネルギーにグラントを提供するSEPに5億ドル。 g)プラグイン電気自動車技術の使用を奨励するプログラムと電力インフラ・プロジェクトの企画・開発・実証、及び、運輸部門の当面の電化プロジェクトを支援するため、州政府・地方政府向けグラントとして2億ドル。 h) 該当条項なし。 i) 州政府や地方政府による代替燃料車や燃料電池自動車の購入支援として3.5億ドル。 j) 先進バッテリーおよび部品の製造に対するグラントとして20億ドル。 |
化石エネルギー | a) 炭素回収隔離技術の実証計画に24億ドル。 | a) 化石エネルギー研究開発に46億ドル。内、20億ドルは、二酸化炭素の大量回収隔離を目的に設計された、ほぼ無公害の発電所1~2基の建設に計上。 |
グリッド投資 | a) 配電網の近代化、及び再生可能エネルギー用の新たな送電線建設を含む「スマートグリッド投資計画(Smart Grid Investment Program)」のための、研究開発、パイロットプロジェクト、および連邦マッチング基金として450億ドル。注3
b)ボンヌビル電力公社による送電網の建設・買収・交換への出資支援として325億ドル。 c) 西部地域電力公社による送電線及び関連設備の新設または改良に対する低利息ローンとして325億ドル。 |
a) 配電網の近代化、及び再生可能エネルギー用の新たな送電線建設を含む「スマートグリッド投資計画(Smart Grid Investment Program)」のための、研究開発、パイロットプロジェクト、および連邦マッチング基金として450億ドル。
b) ボンヌビル電力公社による送電網の建設・買収・交換への出資支援として325億ドル。 c) 西部地域電力公社による送電線及び関連設備の新設または改良に対する低利息ローンとして325億ドル。 |
ローン保証 プログラム |
a) 先進バッテリーおよび部品製造の工場に対するローン保証として10億ドル。
b)エネルギー効率改善を行う地方政府や都市公共施設、学区や高等教育機関に対するローン保証として5億ドル。 c) 再生可能エネルギーを利用する発電計画および送電計画に対する「革新的技術ローン保証プログラム(Innovative Technology Loan Guarantee Program)」に80億ドル。 |
a) 該当条項なし。
b)該当条項なし。 c) 風力やソーラーといった一般的な再生可能エネルギー計画やその送電システム計画に対する「革新的技術ローン保証プログラム」に100億ドル。 |
科学 | a) サイエンスの予算として20億ドル。内、4億ドルは、「America COMPETES法」の定めるエネルギー先端研究計画局(ARPA-E)に、1億ドルは先進科学コンピューティングに配分。 | a) サイエンス・プログラムに4.3億ドル。内、3.3億ドルは実験室の建設やインフラ整備に、1億ドルは先進コンピューター研究計画に計上。 |
国防省 | a) 軍事施設や軍用車両、その他軍装備品のための、エネルギーの生成・送電・規制・使用・貯蔵に関する研究開発・実証評価プログラムに3.5億ドル。
b)該当条項なし。 c) 該当条項なし。 |
a) エネルギー効率化プロジェクトおよび軍施設の近代化に32億ドル。
b)軍事施設におけるエネルギー効率化技術の実証、及び迅速な技術移行の為の研究開発・実証評価に2億ドル。 c) 国防省医療施設のエネルギー効率改善に2.5億ドル。 |
一般調達局(GSA) | a) 連邦政府所有ビルディングにおけるエネルギー節減を目的とする改築や修理に60億ドル。
b)該当条項なし。 c) 連邦政府所有の古い車を代替燃料車に買い換える費用として6億ドル。 |
a) 連邦政府所有ビルディングを高性能グリーンビルへ改造するために必要な措置に60億ドル。
b)連邦高性能グリーンビルディング事務局(Office of Federal High Performance Green Buildings)を設置するために400万ドル。 c) ハイブリッド自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車等、燃費の良い自動車購入に必要な費用として6億ドル。 |
住宅都市開発省(HUD) | a) HUD援助住宅の持ち主によるエネルギー改善投資を支援するグラントやローンとして25億ドル。 | a) HUD援助住宅の持ち主によるグリーン改善のためのグラントやローンとして13億ドル。 |
環境保護庁(EPA) | a) ディーゼル燃料からの排出を削減するプロジェクトを実施する州政府や地方政府に対するグラントやローンとして3億ドル。 | a) 該当条項なし。 |
運輸省
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a) 公共輸送への投資として120億ドル。内、25億ドルは新規又は進行中のライトレール向けグラント、20億ドルは既存輸送システムの近代化予算、残り75億ドルは新設備や既存施設改良予算。
b)該当条項なし。 c) 該当条項なし。 |
a) 公共輸送投資推進のためのグラントとして84億ドル。
b)高速鉄道ルートへの投資として20億ドル。 c) 州政府による都市間旅客鉄道への投資に2.5億ドルのグラント。 |
優遇税制 | a) 燃料電池・バッテリー技術、再生可能エネルギー、省エネ技術、効率的な送配電、炭素の回収隔離に関するエネルギー研究税控除の率を20%引き上げ。
b)燃料電池に対する投資税控除を500ドルから1,667ドルに引上げ。 c) 該当条項なし。 |
a) 燃料電池・バッテリー技術、再生可能エネルギー、省エネ技術、効率的な送配電、炭素の回収隔離に関するエネルギー研究税控除の率を20%引き上げ。
b)該当条項なし。 c) 太陽熱と地熱発電装置に対する2,000ドルという投資税控除の上限、及び小規模風力発電装置に対する4,000ドルの上限を排除。 |
その他 | a) 労働者をエネルギー効率化・再生可能エネルギー産業での職業に備えるための、職業紹介や職業訓練に5億ドル。 | a) 労働者を、ビルの改装やグリーン建築、及び再生可能発電といった活動に備えるための、職業訓練に34億ドル。 |
注1 下院本会議が2009年1月28日に244対188で可決した法案「2009年アメリカの経済回復・再投資法案」は総額が約8,190億ドル。下院本会議に提出された当初は、総額約8,250億ドルと見積もられていたが、その後、議会予算事務局(Congressional Budget Office)が法案のコストを再計算したところ、見積もりが8,160億ドルと更新された。下院本会議での審議で、Bill Shuster下院議員(共和党、ペンシルバニア州)が提案したTransit Programsに更に30億ドルを追加する修正法案が可決されたことを受け、最終的な総額が8,190億ドルとなっている。
注2 2009年1月27日に上院歳出委員会Daniel Inouye委員長(民主党、ハワイ州)が上院本会議に提出した「2009年アメリカの経済回復・再投資法案」で、総額は8,845億ドルと推定されている。
注3 条文は、「送電網の近代化、エネルギーインフラのセキュリティと信頼度の向上、エネルギー貯蔵研究開発・実証の促進、エネルギー供給停止からの回復の促進、および、2007年エネルギー自立及び安全保障法の第13条で定められたプログラム…(1)スマートメーターリングや需要反応、分散型発電や電気貯蔵システムによる、ピーク負荷軽減やエネルギー節約を測定する先進技術を開発するプログラム;(2)需要反応や分散型発電、及び、付帯的サービスを提供する貯蔵の手段を調査するプログラム;(3)広域な計測・制御ネットワーク利用を促進するための研究を行うプログラム;(4)新たな信頼性技術を実験するプログラム;(5)先進技術の導入に必要な通信網のキャパシティを確認するプログラム;(6)利用時リアルタイムの電気料金設定へと移行する可能性を調査するプログラム;(7)送配電システム・ソフトウェアで使用するアルゴリズムを開発するプログラム;(8)米国の輸送分野で、液体燃料の代わりに、十分活用されていない電気の使用を推進するプログラム;(9)ピーク負荷の需要を満たすために、自動車に蓄えられた電気へ電力会社がアクセス出来るような相互接続プロトコルを策定するプログラム;(10)電力網の検出(sensing)、伝達(communication)、分析、電力潮流制御で用いる先進技術に焦点をあてたスマートグリッド地域実証イニシアティブ…の実施のために、送配電およびエネルギー信頼性の活動に450億ドルを提供する」という内容。