オバマ大統領、製造イノベーションを支援する新イニシアティブを発表
2012年04月05日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子
オバマ大統領は、米国製造業の競争力を強化し、国内投資と雇用創出を推進するため、全米製造イノベーションネットワーク(National Network for Manufacturing Innovation)という新イニシアティブを3月9日に発表した。
このネットワークは、全米各地の最高15の製造イノベーション研究所(Institutes for Manufacturing Innovation)で構成されるもので、イノベーション研究所では、基礎研究と製品開発のギャップを埋める応用範囲の広い産業関連製造技術への投資によってイノベーションを促進するために、産業界や大学、 コミュニティカレッジや連邦・州・地方政府機関を結集し; 企業、特に小規模製造業者の最先端設備や能力へのアクセスを助長するために資産を共有し; 学生や労働者に先端製造技能の教育・訓練をほどこす前代未聞の環境を構築していくことになる。各研究所は、地域製造エクセレンス拠点(regional hub of manufacturing excellence)の役割を果たし、各地域の製造拠点を支援するイノベーション基盤を提供するほか、永続する経済において製造部門が重要な柱となることを助長する。製造イノベーション研究所は競争型公募で選定され、下記の実現を目指すことになる:
- 次世代の自動車や航空機、船舶や列車の燃費・性能・耐腐食性を改善する軽量素材の開発
- デジタル設計を使う低コストで小ロットの生産を可能にする「3-Dプリンティング(積層造形とも呼ばれる)」用の基準、材料、装置の精緻化
- 生産性を高め、サプライチェーンを最適化し、エネルギー・水・材料消費を改善するため、高度に機器化された工場の「ビッグデータ」フローをオペレータがリアルタイムで利用することを可能にするスマートな製造インフラ及びアプローチの構築
オバマ大統領は2013年度予算案で、全米製造イノベーションネットワーク創設のために商務省の国立標準規格技術研究所(NIST)から1回限り10億ドルの投資を行うことを提案している。同ネットワークは、商務省、国防省、エネルギー省(DOE)及び全米科学財団(NSF)の共同イニシアティブであり、この構築には議会承認が必要となる。このため大統領は、同ネットワークを提案すると同時に、ホワイトハウスの「We Can’t Wait」取り組みの一環として、製造イノベーション・パイロット研究所(Pilot Institute for Manufacturing Innovation )の立ち上げに早急に踏み出すことも発表した。パイロット研究所には、国防省・DOE・商務省・NSFの既存リソースから4,500万ドルが拠出される。
パイロット研究所は、新たな工業製品や製造工程の商品化・スケールアップに伴うリスクやコストを削減するために、支援省庁の法的ミッションに適った重点技術分野に取り組むことになる。具体的には、各省庁からの初年度予算は下記を支援する:
- 国防省・DOE・商務省からの3,000万ドル … 先端製造機器と研究活動
- NSFからの500万ドル … 先端製造の基礎研究と労働力育成
- 国防省からの1,000万ドル … パイロット研究所で開発された国防の重要ニーズを支援する技術の生産能力増強
全米製造イノベーションネットワーク構築を目指す商務省NIST他連邦参加省庁は、議会審議の為の情報ベースを強化し、主要な利害関係者からインプットを得るために、2012年度中(2012年9月30日まで)に全米各地で一連の「インパクトのある設計:全米製造イノベーションネットワーク構築に関するワークショップ(Designing for Impact: Workshop on Building the National Network for Manufacturing Innovation」」を開催する。ワークショップでは、①幅広いインパクトを持つ技術;②研究所の構造・ガバナンス;③持続可能な研究所運営戦略;④教育と労働力の育成、という4トピックに焦点があてられる。第一回目のワークショップは4月25日にニューヨーク州トロイ市のレンセラー工科大学(Rensselaer Polytechnic Institute)で開催される。