エネルギー省、レアアースのエネルギー革新拠点としてエイムズ研究所を選定
2013年01月10日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子
エネルギー省(DOE)は2013年1月9日、米国のエネルギー安全保障に不可欠なレアアース他重要原料(critical materials)の国内供給不足に対する解決策を策定するエネルギー革新拠点(Energy Innovation Hub)を設置するため、エイムズ研究所(アイオワ州エイムズ)注1の率いるチームに5年間で最高1億2,000万ドルを授与することを発表した。
独特な磁性・触媒活性・ルミネッセンス特性を持つレアアース他の重要原料は、風力タービンやソーラーパネル、電気自動車や省エネ照明といったクリーンエネルギー技術にとって必要不可欠なものであるため、2011年12月にDOEが発表した『重要原料戦略(Critical Materials Strategy)』注2では、ジスプロシウム・テルビウム・ユーロピアム・ネオジム・イットリウムという5種のレアアースメタルの供給上の問題が今後数年にわたりクリーンエネルギー技術開発に影響を及ぼす可能性があることを報告している。
重要原料に専心するエネルギー革新拠点はこの課題に対応するために提案されたもので、重要原料研究所(Critical Materials Institute =CMI)と呼ばれることになる革新拠点注3では、多分野の科学者やエンジニアを結集して、重要原料の選鉱・製造・代替・有効利用・再資源化といった課題に対応するほか、科学研究・技術革新(engineering innovation)・製造工程改善を統合し、米国が直面している原料の課題に対する総合的な解決策を見つけることを目的としている。CMIの活動は以下の4つの重要分野に整理される:
- 供給の多様化 … 現在未だ採算の合わない新規の重要原料を商業的に実現可能にし; 既存資源の加工エコノミクス(economics of processing)を向上させ; 現在の生産エコノミクスに貢献していない副産物の新たな利用方法を確認する。
- 代替物質の開発 … 重要原料を含まない、又は重要原料の含有量が少ない代替物質を開発・導入し; 先進材料の開発・導入を推進するナレッジベースのアプローチを策定する。
- 再利用・再資源化の向上 … 生産・再利用・再資源化の工程における原料有効利用を可能にする、経済的に実現可能な技術を開発することによって、需要を削減し、供給を拡大する。
- 分野横断的研究の実施 … 上記重要分野の基礎的科学ニーズを支援するために必要な理論ツール・計算ツール・実験ツールを開発し; CMIで開発する新規の原料やプロセスの環境持続性やライフサイクルを査定評価する戦略を開発・適用し; CMIで開発する科学工学的解決策の社会的・経済的実行可能性を評価する。
エイムズ研究所の率いるCMIには、アイダホ国立研究所・ローレンスリバモア国立研究所(カリフォルニア州)・オークリッジ国立研究所(テネシー州)の3つのDOE国立研究所の他に、ブラウン大学(ロードアイラインド州)やパデュー大学(インディアナ州)やラトガーズ大学(ニュージャージー州)といった7大学、及びゼネラルエレクトリック社やモリコープ社(コロラド州)といった民間企業7社がパートナーとして参加する。
注1 同研究所は、DOE傘下の官有民営(government-owned, contractor-operated =GOCO)研究所で、アイオワ州立大学が運営している。
注2 同報告の主要ポイントとR&Dの進捗状況については、NEDOワシントン調査レポート「エネルギー省が発表した『重要原料戦略』:概要」を参照されたし。
注3原子炉モデリング・シミュレーションのエネルギー革新拠点(Nuclear Energy Modeling and Simulation Energy Innovation Hub)、太陽光利用燃料生産のエネルギー革新拠点(Fuels from Sunlight Energy Innovation Hub)、省エネビルディング・システム設計拠点(Energy-efficient Building systems Design Hub)、バッテリーとエネルギー貯蔵のエネルギー革新拠点(Energy Innovation Hub for Batteries and Energy Storage)に続き、5つ目のエネルギー革新拠点となる。