オバマ政権が発表した4年に一度のエネルギー計画見直し
(Quadrennial Energy Review)
NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2015年05月20日
オバマ政権が2015年4月21日、『4年に一度のエネルギー計画見直し(Quadrennial Energy Review =QER)』を発表した。QER第一弾では、米国のエネルギーインフラに焦点をあて、経済競争力・エネルギー安全保障・環境責任を推進する為には、どのような方法で国家エネルギーインフラを近代化していくべきかという問題を検討している。
今回発表のQERは、(1) 送電・貯蔵・配電(TS&D)インフラストラクチャーのレジリエンス; (2) 配電網の近代化; (3) 変化する世界市場における米国エネルギー・セキュリティ・インフラの近代化; (4) 共用の輸送インフラ(Shared Transport Infrastructures)の改善; (5) 北米エネルギー市場の統合; (6) 雇用と従業員訓練の強化; (8) TS&Dインフラの立地と許可、に分けられ、各々に関して調査結果と提言が示されている。ここでは、こうした調査結果と提言を概説する。
送電・貯蔵・配電(TS&D)インフラストラクチャーのレジリエンス、信頼性、安全性及び資産防護の強化
【調査結果】
- エネルギー供給断絶の影響を緩和することが、エネルギーインフラのレジリエンス(強靭化)にとって必須である。 … エネルギー供給が途絶した場合、システムを安定させて回復へと向かう為の包括的な緊急時対応プロトコルが整備されていることが重要。
- 送電・貯蔵・配電(transmission, storage and distribution =TS&D)インフラは、ハリケーンや地震、旱魃や山火事、洪水や極端な高低温といった自然現象に弱い。
- 自然災害の脅威やインフラの脆弱性は地域によって大幅に異なる為、地域的な解決策が最も重要となる。
- 天然ガスや液体燃料の供給システム断絶は停電に比べて起こる可能性は低いものの、発生時にはその回復は停電からの回復よりもはるかに困難となる。
- サイバー攻撃や物理的な攻撃に対する懸念が増大している。
- 送電系統で最も脆弱な部品の一つである高圧変圧器に関しては、業界や連邦規制当局が努力を強化している。しかしながら、その脆弱性へ対応する現行プログラムは、複数の高圧変圧器の同時故障に伴う安全・信頼面での懸念に対応するには十分とはいえない。
- 評価用ツールやフレームワークは、エネルギー供給断絶がシステム性能に与える影響を特定することが中心であって、経済的損失や人命の損失といった全米又は地域的影響を調査する能力が低い。評価用ツールやフレームワークを改善する必要がある。
- 天然ガス部門の変化がレジリエンスや信頼性、安全性や資産防護(asset security)に与える影響はプラスとマイナスの双方。 … オンショアのシェールガス・インフラ増築が、嵐に晒される洋上インフラへの依存率削減によって天然ガスのレジリエンスにプラスとなっている反面、発電の天然ガス依存が増大しており、新たな相互依存関係や送電系統の脆弱性をもたらしている。
- 液体燃料や天然ガスシステムの多数のコンポーネントの操作には電気が必要である為、天然ガスの発電利用が増えるにつれて、電力と天然ガスの相互依存度が増している。
- 老朽化した漏出しやすい天然ガス輸送パイプライン及び関連インフラが、安全面・環境面での懸念を高めている。
【提言】
- エネルギー省(DOE)は国土安全保障省(DHS)や関心を有するインフラ利害関係者と協力して、エネルギーインフラのレジリエンス、信頼性、及び安全性を査定する為の包括的なデータ、ツール、評価基準(メトリクス)、解析的フレームワークを策定すべきである。
- 天然ガス輸送システムの安全性と環境パフォーマンスのコスト効率的な改善を奨励するため、DOEは競争ベースで州政府へ財政援助を提供する包括的プログラム(推定コストは10年間で25億~35億ドル)を確立すべきである。
- DOEは、オバマ大統領の2016年度DOE予算案で設置が提案されている「州政府エネルギー保証計画(State Energy Assurance Plans)」注1を、複数年にわたり継続して支援(必要予算は、3年間サイクルのプログラムの場合、10年間で3億5,000万ドル; 2年間サイクルでは10年間で5億ドル)すべきである。
- DOEは、エネルギーインフラのレジリエンス・信頼性・安全性を増進する革新的な解決策を推進する為、州政府向けの競争グラントプログラムを確立する(推定コストは10年間で30億~50億ドル)べきである。
- DOEは、DHS・その他連邦政府機関や州政府及び産業界と連携をとりながら、変圧器の機能喪失に伴うリスクを軽減する為に必要な政策、技術仕様、ロジスティック構造、及びプログラム構造を分析すべきである。
- DOEは、燃料供給が断絶しやすいと認定された国内の全地域で地域別石油製品備蓄(regional petroleum product reserve =RPPR)の費用対効果分析に取り組み、調査の結果に応じてRPPRの増設または拡大を支援すべきである。
- RPPRから石油製品を放出する大統領の諸々の権限を一つに統合すべきである。
配電網の近代化
【調査結果】
- 老朽化したインフラを置換し、信頼性を維持し、市場の効率性を高め、温室効果ガス(GHG)削減や再生可能エネルギー導入といった政策目標の達成を助長するために、今後20年間は送配電網への大規模な投資が予想される。
- 高質な再生可能エネルギーやその他低炭素資源との接続を可能にする長距離送電網、及び、その場で電力を提供できる分散型エネルギー資源の活用が、低炭素電力を可能にする。
- 送電網新設の規模は、歴史的な投資規模内に収まる。
- 柔軟な送電網運用とデマンドレスポンスは、再生可能エネルギーの導入を可能にし、送電網新設のニーズを削減する。
- エネルギー効率化、スマートグリッド技術、貯蔵、及び分散型発電への投資は、レジリエンス強化や汚染削減に貢献する。
- 革新的技術は電力システムにとって大きな価値がある。
- デマンドコントロールや発電を行う需要家側デバイスとの通信を強化するで、配電網の効率及び信頼性が向上する。
- 新規サービスが技術、及びエネルギー効率を適切に評価することは、公益事業モデルに選択肢を提供することになる。
- エネルギー効率を一貫して測定・評価することは、レジリエンスの強化や送電インフラ新設費の回避に不可欠である。
- 州政府は、将来の送電系統発展の為のテストベッドとなる。
- 事業モデルや公益企業体制は様々に異なる為、問題に対応する「万能サイズ(one-size-fits-all)」解決策というものは有り得ない。
- 連邦政府と州政府の電力サービスに関する管轄権はますます重複しており、これが将来の送電系統の開発を妨げる。
【提言】
- DOEは、配電網近代化を目標とするコストシェア型研究開発・分析・技術支援プログラムを複数年にわたり継続して実施注2(推定コストは10年間で35億ドル)するべきである。
- DOEは、エネルギー貯蔵の展開について地方レベル及び州レベルで分析を行い、送電網フレキシビリティとエネルギー貯蔵に関するフレームワークと戦略を策定すべきである。
- DOEは、提案及び実行中の送電プロジェクト、現在及び将来のコスト、地域間協力他の要因に関する査定評価を含めた全米送電計画見直しを実施すると共に、新規送電網開発に対するインセンティブと障害も査定すべきである。
- DOEは、電力の信頼性・値ごろ感(affordability)・効率の向上と低炭素発電や環境保護を狙いとするTS&Dインフラ投資計画を推進するために、州政府に競争ベースでグラント(推定コストは5年間で約3億~3億5,000万ドル)を提供すべきである。
- 消費者と産業界が新技術の価値を最大限活用する為には、連邦政府と州政府が前向きに協力することが必要である。DOEが中心となって、連邦・州・部族政府の公益事業委員や立法者及びその他利害関係者を結集し、管轄区域を越えた目標調整を行うべきである。
- 連邦政府は、送電系統のサービスやアプローチの価値を評価し、その価値を送電網の運用や計画立案に統合していく為のフレームワークを策定すべきである。
- DOE及び国立標準規格技術研究所(NIST)他連邦省庁は、業界、電気電子技術社協会(IEEE)、州政府当局者、その他利害関係者と協力して、送電網の接続性・相互運用性を向上させるオープンスタンダードの推進の為に連邦政府が取れる追加的な取り組みを確認するべきである。
- DOEは、エネルギー効率化で得た節約を測定・確認する統一的な手法を確立し、これら手法の公共・民間省エネ計画への採用を推進するべきである。
変化する世界市場における米国エネルギーセキュリティ・インフラの近代化
【調査結果】
- 米国の石油需要、石油輸入量、緊急時対応体制の適切性、燃料在庫水準等、多数の要素が米国のエネルギーセキュリティに影響を及ぼしている。
- 米国は石油・天然ガスの生産で前例のない成長を達成し、今では世界最大の石油・天然ガス産出国となっている。
- 石油の配送網が大幅に変化している: パイプラインで南から北へと流れた石油が現在では北から南への流れに変わり、石油を米国各地の石油生産地域から精製所へと運ぶ手段もパイプライン、鉄道、荷船と多様化。
- 国内配送網の変化(パイプラインの逆転や競争的商業ニーズ)及び原油輸入依存度の低減が、戦略石油備蓄(SPR)からの有効な石油放出に課題をもたらし、将来のエネルギー供給断絶を相殺するSPR能力を減退させている。
- 国内石油生産の増大で、1973-1974年のアラブ諸国による原油禁輸措置後に制定された米国の石油輸出法令に注目が集まっている。
- パイプライン、送電線、道路、鉄道、内陸水路、港湾の広大なネットワークが、米国をメキシコやカナダに結び付けている。
- 過去十年間に急増した米国内のバイオ燃料生産が、エネルギー安全保障の強化、運輸部門からの温室効果ガス(GHG)排出の削減に一役かっている。
【提言】
- エネルギー供給非常時にSPRが有効利用されるよう、米国議会は現在の石油市場を考慮した上で、SPR放出権限を更新すべきである。
- 米国経済をエネルギー供給非常事態から守るために、DOEはSPR緊急時対応能力の最適化に対する投資(予想される必要投資額は15億~20億ドル)を行うべきである。
- 米国はエネルギー安全保障問題に関して、同盟国や主要なエネルギー貿易相手国と引続き意見交換を行うほか、米国の利益やG-7原則に一致するエネルギーインフラに関連した活動を支援すべきである。
- DOEと国防省は、ドロップインバイオ燃料(ジェット燃料やディーゼル燃料)に関する研究・実証活動を継続するほか、エタノール混合度の高い燃料を販売するインフラへの投資を希望する州政府や民間企業等に技術支援を提供すべきである。
- プロパンガスTS&Dインフラの変化を考慮し、DOEはエネルギー情報局(EIA)による国内プロパンガスの貯蔵・利用に関するデータ収集と分析を支援すべきである。
- 関連省庁は、国内搬送とエネルギーセキュリティの関係を調査すべきである。
共用の輸送インフラ(Shared Transport Infrastructures)の改善
【調査結果】
- かつてはメキシコ湾から北米の内陸部へと原油を運んだパイプラインが今では、米国・カナダ産の原油をメキシコ湾への運んでいる。また、ノースダコタで生産された石油が米国の東海岸と西海岸にある精製所へ送られるようになり、原油輸送手段としてパイプライン以外の輸送方法(列車や荷船)の利用が増加している。
- インフラの能力の限界が商品間の競争を激化させ、一部のコストが消費者に回されている。
- 過去数十年間に国内生産量が激増したエタノールの搬送には、鉄道、荷船、トラックが不可欠である。
- 鉄道輸送の混雑は、幾つかの発電所における十分な石炭備蓄維持能力へ影響を与えている。
- 米国では、鉄道が主として民間投資の民間所有である一方、海運インフラには連邦政府、州政府、地方政府、民間部門が投資。また車道は、連邦政府、州政府、地方政府、時としては民間企業の所有であるため、米国の輸送インフラへの資金提供は複雑である。
- エネルギー商品・装置・材料、特に石油や石油精製品の流通には航行可能な河川が不可欠である。
- 鉄道・荷船による原油輸送の増加は、付加的な安全予防手段の必要性を浮き彫りにしている。
- エネルギー供給や材料・部品の積荷増加(特に、部品の巨大化・重量化)が共用の輸送インフラを圧迫している。
【提言】
- 鉄道による原油・エタノール輸送の安全性に関連する重要課題についての理解を高めるため、DOEとパイプライン・危険物安全課(Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)の共同作業を支援すべきである。
- DOEと陸上運輸委員会(Surface Transportation Board =STB)及び連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、鉄道輸送の混雑がエタノールや石炭他エネルギー製品の流れに及ぼす影響を更に分析すべきである。
- DOEとFERCは、石炭の配送遅延や配送未完が送電系統に及ぼす影響を分析すべきである。
- エネルギー製品やエネルギー資材の鉄道輸送に関する重要エネルギーデータの欠落に対処するため、STBとEIAはデータや洞察を共有する共同作業を継続するべきである。
- 一つの機関やプログラムでは輸送インフラ投資の規模と多様性に対応できないことを認め、行政府は水上貨物輸送インフラに対する代替的な融資メカニズムを検討すべきである。
- 運輸省はDOEと密接に協力して、共用のエネルギー輸送システム向けの新たな競争グラント計画「しASSETS(Actions to Support Shared Energy Transport Systems:連邦政府の推定投資額は10年間で20億~25億ドル)」を確立すべきである。
- 水上輸送インフラの為の官民パートナーシップを支援すべきである。
- DOEは、エネルギーの輸送方法に関するデータの収集・モデリング・分析を改善・調整するため、運輸省・農務省・陸軍工兵部隊(USACE)・沿岸警備隊から成る省庁間努力をリードすべきである。
- DOEは運輸省及びUSACEと協力して、全米のエネルギーに関連する共有水上輸送インフラをアップグレードする機会及び投資ニーズについて一回限りの包括的なニーズ査定評価を実施するべきである。
- DOEは関連省庁と協力して、巨大なエネルギー材料・設備・部品の輸送におけるロジ面での課題を検討すべきである。
北米エネルギー市場の統合
【調査結果】
- カナダとメキシコは米国にとって重要なエネルギー貿易パートナーであり、エネルギー貿易の規模は対カナダが2013年に1,400億ドル、対メキシコが2012年に650億ドルであった。両国は米国にとって、安定したエネルギー供給源となっている。
- 三ヶ国の更なる連携によって、エネルギーシステムの効率を改善し、北米エネルギー市場の供給断絶に対するレジリエンシーを構築し、データの交換や規制の調和を確立することが出来る。
- 米国とカナダの電力システムは相互連係され、2014年には約30億ドルの電力取引が行われた。過去5年間にDOEへ出願されている送電事業が建設されれば、更に約4,100メガワットの水力発電が米国の電力ミックスに追加されることになる。
- カナダでは、天然ガス生産が消費を僅かに上回り、輸出が向こう30年間で徐々に増加する見込み。また、石油生産も引続き増加すると見込まれている。
- メキシコは2013年に自国のエネルギー部門を改革し、石油・天然ガス資源を民間部門の探査・開発へと開放した。
- 米国の天然ガス輸出増加は、メキシコの天然ガス火力発電を増加させ、メキシコの環境目標達成に役立つ可能性がある。
- 北極圏の気候変動は今後も続くと見られ、永久凍土の溶解や海氷の縮小は現在進行中のエネルギー開発に影響を及ぼすことになる。
- エネルギー資源に乏しく海外石油に大きく依存するカリブ海諸国では、燃料油利用の発電がエネルギー需要の大半を占めている。燃料油を天然ガスに転換することで、電気料金を引き下げ、二酸化排出を30%削減することが可能である。
【提言】
- 過去の成果に立脚して北米のエネルギー統合を更に強化する機会が存在することから、米国・カナダ・メキシコの三ヶ国は以下を遂行するべきである:
- 北米エネルギーダイアログで達成した進展の継続
- 三ヶ国間におけるエネルギーデータ統合の拡大
- 三ヶ国のエネルギー大臣及び関連政府省庁の間における共同企画・モデリング・予測活動の推進
- 国境を越えた規制統一に向けた法律・規制・政策ロードマップを策定する為、学術機関・非営利団体との協力プログラムを確立
- 三ヶ国政府における人材トレーニングの調整と技術ダイアログの推進
- 米国政府は下記を通じて、北極地方におけるエネルギー安全供給と信頼性、及び環境保護でリーダーシップを発揮するべきである:
- DOE、内務省、沿岸警備隊及び国務省はカナダや北極協議会(Arctic Council)メンバー国と協力して、海洋油濁の影響とその対策の有効性に関する研究と情報交換; 汚染事故の影響緩和に必要な資源の確認と資源動員; ロジ的に困難な地域における対応準備や対応策の国際ガイドラインの策定、を行うべきである。
- DOE、内務省及び国務省は北極協議会の下で、遠隔地域再生可能エネルギーパートナーシップ(Remote Community Renewable Energy partnership)を推進すべきである。
- 米国はカリブ海戦略の一環として、エネルギー供給の多様化を支援すべきである。
TS&Dインフラの環境側面への対応
【調査結果】
- TS&Dインフラは、環境改善への鍵ともなれば、障害ともなる可能性がある。
- 今回のQERが対象とするTS&DインフラからのGHG排出量は、米国のGHG排出量の約10%であり、エネルギー部門が放出する大気汚染と水質汚染の全体量に占める割合は比較的小さい。
- エネルギーインフラは、土地利用や生態系に直接的、間接的、及び累積的な影響をもたらす。
- エネルギーの輸送・精製・加工インフラは、公衆衛生や環境へ危険をもたらす基準大気汚染物質(criteria air pollutants)の一要因である。
- パイプラインや鉄道、水上輸送船による原油輸送は、安全面・環境面での影響をもたらす。
- 米国は現在、二酸化炭素(CO2)輸送パイプラインを4,500マイル以上所有しており、これが低炭素未来実現への重要なコンポーネントになる可能性がある。
【提言】
- 天然ガスTS&Dインフラから放出されるメタンガス排出量の数値化を改善する戦略は、新たな計測に対する連邦政府支援を必要とする。議会は、オバマ大統領が2016年度予算案で要求している、DOEに新設する研究・分析プログラム(Research and Analysis Program)予算の1,000万ドルを認可すべきである。
- DOEは、天然ガスTS&Dシステムからのメタン漏れを検出・削減するコスト効率的技術のR&Dプログラムを継続、拡大すべきである。
- ARPA-EはMONITORプログラムで、天然ガスシステムからのメタン排出量を継続的にモニタリングする画期的技術の開発に3,000万ドルを提供。DOEは、MONITORプログラムの成功したプロジェクトが実地試験・導入へと進む為に必要な追加資金を提供すべきである。
- USACEはその他の適切な連邦省庁と協力して、浚渫材料の処理、及びその有効利用や破棄に関する研究開発を継続すべきである。
- DOEはその他連邦省庁と協力して、TS&Dインフラの環境面での特徴や環境へ与える影響に関するデータ及び分析を改善するべきである。
- DOEは州政府と協力して、CO2パイプラインの規制・立地に関するベストプラクティスを推進するべきである。
- 炭素回収・利用・貯蔵(carbon capture, utilization and storage)の商業展開を加速化し、炭素回収・利用・貯蔵新技術の開発を促進する為、オバマ大統領は2016年度予算案で、二酸化炭素の投資・隔離税額控除(Carbon Dioxide Investment and Sequestration Tax Credit)を提案。具体的には、炭素隔離技術(CCT)と関連インフラ投資への税額控除として20億ドルを要求している。議会はこの税額控除を法制化するべきである。
雇用と従業員訓練の強化
【調査結果】
- エネルギー供給・送配電分野は2013年に約100万人を雇用。
- エネルギー部門全体(TS&D分野を含む)の雇用は2030年までに更に150万増加の見通し。その大半は建設・設置・保守・輸送関連ながら、コンピューターや数学の技能者も約20万人必要となる。
- 新技術(特に電力部門)によって、電力関連労働者の必要とするスキルが変化しており、スマートグリッド計画の管理者、メーター設置者、インテリジェントな送配電自動化装置の製造者とサービス提供者、ソフトウェアの提供者やシステム・インテグレーター等の雇用機会を創出している。
- 天然ガスTS&Dシステムにおけるメタンガス削減活動の加速化は、31万以上の雇用を支援するものと予想される。
- 将来の課題に対応するためには、TS&Dインフラ部門労働者に必要な広範な技能を重視する、新たな雇用主導型の訓練戦略が必要である。
- 雇用面と従業者訓練面での優先事項の確認と効果的なプログラムの確立には、良いデータが必要である。
【提言】
- 行政府は、DOE・労働省・教育省の省庁間技能作業部会(interagency Skills Working Group)を通じて、エネルギー分野の職業技能訓練制度を支援すべきである。
- DOEは、国家訓練教育資源(National Training and Education Resource)を維持し、その継続的な改善を行う組織を対象とするコンペティションを通じて、エネルギー関連分野の最新講座を開発・促進・拡大すべきである。
- DOEは、エネルギーや製造業に関する質の高いカリキュラムと徒弟プログラムの策定を促進する為、労働省や全米科学財団(National Science Foundation =NSF)の既存プログラムとの調整を行うべきである。
- DOEは、多数の新規職業に必要な技能を明確にする業界指導のプロセスを支援・推進すべきである。
- 退役軍人のエネルギー関連職への移行を促進する為、DOEと労働省と国防省は産業界や利害関係者等と協力して、軍事職業コードと民間のエネルギー部門コードとの照会を標準化すべきである。
- DOEはエネルギー関連職に一貫した定義を提供して、エネルギー雇用を数値化するため、既存の雇用データ収集システムを改正する省庁間作業部会(労働省と商務省を含む)を設置すべきである。
TS&Dインフラの立地と許可
【調査結果】
- 大規模なインフラ・プロジェクトが提案されると、連邦・州・地方・部族政府が各々に、安全・環境・コミュニティ資源へ及ぼし得る影響を考慮し、その最小化に尽力することになる。各政府は、プロジェクトの立地と許可で度々、重複又は相反する義務を負っている為、複数管轄機関の関与はインフラ・プロジェクトの立地・許可・審査に遅延を引き起こしている。
- インフラ・プロジェクトの立地・許可・審査では、連邦政府と部族・州・地方政府との緊密な提携が不可欠である。
- 立地・許可・審査過程の信憑性を得るためには、市民の活発な参画が極めて重要である。
- 大規模なインフラ・プロジェクトには概して、複数年にわたる設計・開発・建設と複雑な認可プロセスが伴う。エネルギーインフラ事業の認可プロセスやスケジュールはプロジェクトの規模と種類にって大きく異なる。
【提言】
- インフラ・プロジェクトの立地・審査・許可に関与する連邦政府機関の予算と人員が大幅に削減され、連邦政府によるエネルギーインフラ事業の立地・許可プロセス改善努力の殆どが遅延している。議会は主要な連邦政府機関に十分な予算を計上すべきである。
- 多くの大規模エネルギーインフラ事業が州・地方政府の立地決定に左右されるほか、連邦政府には、プロジェクトが部族所有の土地を横断する場合にこの影響を受けるインディアン部族と協議を行う義務がある。当該コミュニティや非営利団体その他利害関係者との早期対話は立地問題に伴う衝突を削減し得ることから、連邦政府と州・地方政府との調整や、連邦政府と当該インディアン部族との政府間討議を優先視すべきである。
- 省庁間協力や当該コミュニティの参加を推進する為、連邦政府は可能な限り、各連邦機関の地方事務局や出張所でエネルギーインフラの環境審査・許可業務に従事するスタッフを一つの場所に集め、学際的なエネルギーインフラ・チームを設置すべきである。
- 国土への悪影響を回避または最小化できない場合、連邦政府は悪影響を景観・エコシステム・河川レベルで相殺する革新的な軽減活動を行うべきである。
- 省庁間の調整を強化する為、オバマ政権は、運輸省長官室内に省庁間インフラ許可整備センター(Interagency Infrastructure Permitting Improvement Center)を新設することを提案している。議会はこのセンターの設置を認可し、予算を計上すべきである。
- 一部の省庁がプロジェクト申請者から許可手続き費用を回収する権限を有する一方、こうした回収権限を持たない省庁もある。オバマ大統領が2016年度予算案で提示している、プロジェクト申請許可手続き費用の回収を認可する提案を採択すべきである。