上院財政委員会、期限切れの優遇税制措置を2年間延長する法案を可決
2015年07月22日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子
上院財政委員会は2015年7月21日、生産税額控除(Production Tax Credit =PTC)を始めとする、2014年12月31日で期限切れとなった52の優遇税制措置注1を2016年12月31日まで2年間延長するという法案を23対3で可決した。反対票を投じた議員は、Dan Coats上院議員(共和党、インディアナ州)・Mike Enzi上院議員(共和党、ワイオミング州)・Pat Toomey上院(共和党、ペンシルバニア州)の3名であった。
上院財政委員会が7月21日のマークアップで承認した修正条項を含むバージョンは未だ公開されていないものの、同マークアップに先立ってOrrin Hatch上院財政委員会委員長(共和党、ユタ州)が発表した「特定の期限切れ税制条項を延長する法案に関する委員長見解(Chairman’s Mark of a Bill to Extend Certain Expiring Tax Provisions)」で、法案の概要を垣間見ることが可能である。ここでは参考情報として、この委員長見解に含まれているエネルギー関連条項の概要を報告する。
エネルギー関連条項
- 既存住宅のエネルギー効率改善設備購入に対する10%の税額控除を2年間、2016年12月31日まで延長。省エネ窓に最高$200、省エネボイラーや加熱炉に最高$150、その他の改善に最高$300の控除。
- 現行法で、セルロース系バイオ燃料製造施設は、2014年12月31日までに製造した燃料に、1ガロン当たり$1.01のPTCを要求可能。このPTCを2年間延長し、2016年12月31日までに製造されたセルロース系バイオ燃料を控除対象とする。
- バイオディーゼルに対する1ガロン当たり$1.00の税額控除と、小規模の農産物系バイオディーゼル生産者(agri-biodiesel producer)に対する1ガロン当たり$0.10の税額控除を2016年12月31日まで延長。更に、バイオマスから生産するディーゼル燃料に対する1ガロン当たり$1.00の税額控除も2016年12月31日まで延長。
- アメリカ先住部族民の所有する土地で生産された石炭に対する、1トン当たり$2.00のPTCを2016年12月31日まで延長。
- 風力他再生可能エネルギー利用の電力に対する1キロワット時当たり$0.023(3セント)のPTCを2年間延長し、2016年12月31日までに建設を開始した施設に適用。また、PTCに代わる30%の投資税額控除(Investment Tax Credit =ITC)の選択も2016年12月31日まで延長。
- 2003年国際省エネルギーコード(International Energy Conservation Code =IECC)の基準で建設された同等の住宅と比べて冷暖房用エネルギー消費の30~50%削減を達成する、新築の省エネ住宅に対する税額控除を2016年12月31日まで延長。
- 現行法の定める適格第二世代バイオ燃料工場資産の減価償却を2年間延長し、2016年12月31日までに稼動した工場資産に適用。
- 照明装置・冷暖房・換気装置・温水システム等によって50%以上のエネルギー効率改善を達成する省エネ商業ビルに対する1平方フィート当たり最高$1.80の税額控除を2016年12月31日まで延長。
- 連邦エネルギー規制委員会(FERC)や州政府の電気事業再編政策を遂行する為に適格電力会社が行う販売や処分に対する、現行法の繰延条項下での取扱を2016年12月31日まで延長。
- 代替燃料と代替燃料混合物(液化水素を含む)に対する1ガロン当たり$0.50の税額控除を2016年12月31日まで延長。
- 代替燃料車の燃料補給所(水素補給所を含む)に対する30%、最高$30,000のITCを2016年12月31日まで延長。
- 新車の燃料電池自動車に対する税額控除を2016年12月31日まで延長。自家用車と軽トラックに対する控除額は$4,000、重量車の控除額は車両の重量で決まり最高$40,000。
- 2015年と2016年の2年間、高速道路適応のプラグイン電気オートバイに対して個人所得税控除を提供。プラグイン電気三輪車は対象外。
注1 8条項が個人対象の税額控除、31条項がビジネス対象の税額控除、13条項がエネルギー関連の税額控除。